アマゾンの深い森にくらす先住民族は、森のめぐみと、森がはぐくむ川のめぐみを糧に生きています。畑で作物を育て、川で魚をとり、森のけものを狩る自給自足のくらし。森の中の焼畑では主食となるマンジオッカ(キャッサバイモ)が、家のすぐ裏の小さな畑ではサツマイモやカボチャなどがつくられます。先住民族が行う伝統的焼畑は、じきに地面から木々が芽吹き始め、やがて森が再生するという、持続可能な知恵に満ちた農業です。

シングー川流域の森を空から眺めると、川や湖の近くにぽつりぽつりと先住民族の村があるのが見えてきます。村には円形の大きな広場を囲むようにして丸みのある家が丸く並び、その周囲には焼畑や、焼畑跡に再生した二次林が広がっています。ひとつの村の人口は最大でも500人ほど。妻の生家に夫が入って2〜4世代が同居するという女系家族の文化を多くの民族が持っています。

祭り

先住民族の生活の中に祭りはとても重要な位置をしめています。死者の魂を送る祭り、3日3晩歌い踊り続ける女たちの祭り、子どもから大人になる通過儀礼、リクガメの収穫祭…。地域や民族によってさまざまにある祭りの背景には、森羅万象に精霊が宿ると考えるアニミズムの世界観が横たわっています。祭りの日、ボディペインティングと羽根飾りの正装で身を整えた人たちで村は色鮮やかににぎわいます。

いきもの

アマゾン熱帯林は植物や動物たちの宝庫です。警戒心の強い野生動物を昼間に村の周囲で見かけることはまれですが、なかには森の中で親とはぐれてしまった動物の子を保護してペットのように飼う村人もいます。

伝統工芸

日々の暮らしの道具や身を飾るアクセサリーは、自然が与えてくれる素材を使って人の手で生み出されます。紋様や加えられた装飾から、先住民族の美意識が伝わってきます。伝統的なビーズ細工は、丸い草の実や、ヤシの実の殻を小さな円盤状に削ったものに穴を開けてつくられます。ブラジル社会との接触前、先住民族社会にまだ金属がなかった時代には、鋭くとがった硬い魚の骨を使ってビーズ粒に穴を開けていたそうです。

テクノロジー

先住民族社会と外の社会との間にも、人や物や情報の行き来が年々進みつつあります。貨幣経済やテクノロジーの侵入・導入もまた同様です。同時代に生きる人間として先住民族自身が何を選び取り、それらをどう主体的に使いこなしていくのか。決してそれらに使われるのではなく。…という模索の只中にある今は、彼らにとって過渡期の時代だと言えるでしょう。そんな中、都会の大学や大学院で学んで村に戻り、ITや法律などの知識を駆使して政府などとの交渉に臨む新世代もまた少しずつ増えています。先住民族としてのアイデンティティや伝統文化と現代文明、そのいずれかを完全に否定するというのではない、もうひとつの道を、彼ら新世代は歩み出そうとしています。

アマゾンの熱帯林
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