JAPAN TIMES (2005年10月26日付)                                           ↓日本語訳は下記をご参照ください。


                     Japan Times (10/26/2005.Wed.)

                アマゾン熱帯林の保護はそこに暮らす人を守ること
                  日本の運動家が森に住むブラジルの部族を助けるー

                      <我々の星、地球(ステファン・ヘッセ)>

 1989年、彼の初めてのアマゾン来訪から2年後、歌手でソングライターのスティングは『Jungle Stories; The Fight for the Amazon(Barrie&Jenkins)を協同執筆した。著書の中で彼は「森を一度訪れたことは、その先永遠にそこに捕らえられたことと同じで、私はそこの神秘的な美しさと地球上の全ての人にとって森を維持することがどれだけ大切であるかと言うことを気付かされた」と書いている。
 同年5月、スティングとカヤポ族族長のラオーニはアマゾン熱帯雨林の破壊の現状を多くの人に理解してもらうために世界ツアーを行ない、その中で日本を訪れた。日本のコンサートプロデューサーであった南研子は、そのツアー中のコーディネイトを頼まれ、スティングと同様に彼女の人生は永遠に変わることとなった。
 南は、ラオーニのように威厳に満ちあふれ優しさのある人に会ったことはなかった。彼と握手をした瞬間、彼女はまだ見たことのない彼の生活する熱帯林と不思議なつながりを感じた。3ケ月後の19895月、南は熱帯森林保護団体(Rainforest Foundation Japan)を設立し、アマゾンへの意識を広め、現地の先住民を支援することを目的として活動をはじめた。
 57歳の南は、ブラジルに20回訪れ、カヤポ族やシングーの部族と毎回2,3ケ月を過ごしている。
 悲しいことに、彼女がRFJの代表をしている年月の中で、アマゾンの状況は悪化の一途を辿っている。数十年にわたる国際的な警鐘にも関わらず、土地なき者や探鉱者の開発による破壊への抜本的な解決に対してはほとんど何も行なわれていない。
 「アマゾンの生態系はブラジルの中でもとても特殊です。この地域は氷河期時代にも緑が残り、大変珍しい動植物のようなはかりしれないほどの貴重な遺伝子資源に満ちています。結果、ブラジルとしても熱帯林保全と遺伝子資源の”ショーウィンドウ”としてこの地域を保持していきたいと想っていますが、密猟者は保護区内にも増加し、特殊な野生種や、マホガニーのような経済的価値の高い木々を獲っていきます。」と、彼女は最近のインタビューで発言している。
 さらなる破壊は、日々の森焼きやブルドーザーにチェーンをつけて根こそぎ木々を倒して1100ha以上を伐採していくものがあげられる。「毎年、東京ドーム21,000個分のアマゾンの熱帯林が農場に変換され、近年では日本への輸出用大豆の畑が目立ちます」と南は説明する。
 昨年、26,130平方kmのアマゾン熱帯林が消失し、ブラジルの環境省のデータによると、1996年の過去最悪の記録である29,000平方kmに次ぐ面積であるという。
 森と先住民たちにとってその他の脅威は、高速道路の建設、ダム、牧場造成、材木、鉱物資源の採掘(鉄、ボーキサイト、金)、汚染(金採掘に使用される水銀)、マラリア、結核、インフルエンザや外部者によって持ち込まれる伝染病などがある。
 おそらく現在続けられている破壊の現状よりも衝撃的な事実は、アマゾンは私達地球の健康を左右する大きな問題だと何十年も認識されているにも関わらず、この現状を続けているということである。RFJによると、アマゾン熱帯林は世界中の熱帯林の半分を占め、我々の呼吸に欠かせない酸素の約3分の1を排出している。そして、地球上の生物遺伝子(植物、動物)の半数を抱えているという。
 事実、多くの専門家はこれらの森にはガンやエイズの特効薬になるものが埋没しているだろうと推測しており、また、この地の遺伝子資源の2%ほどしか未だ確認されていない。先住民の呪術師は6,000種類以上の植物を見分け、その使い方を熟知している唯一の存在である。
 「森を守るのは先住民だけができる」と当時、スティングは書いた、そしてブラジル政府は論理的にそれを認めた。
 1992年、リオデジャネイロで行なわれた国連地球サミットで当時のブラジル大統領、フェルナンド・コールはブラジル全土の10%を先住民保護区とすることを約束した。しかし、南によるとたった4%しか公的に認められておらず、残りの6%にあたる238の地域は未だ承認されていないままであるという。
 500年前には1000万人の先住民がアマゾン流域に住んでいたと推定されるが、今日、200部族、数十万人がブラジル全土に点在している。ヤノマミ族が最も多く、20,000人であり、一方でカヤポ族は15,000人である。
 カヤポ族はそれでも恵まれているとも言える。彼らは18,000平方kmの面積を有するシングー国立公園に、流域部族と合わせて18部族、およそ20,000人で居住している。
 「私は政府を信じたい」とラオーニは『Jungle Stories』の中で述べている。「私は彼らが全ての人のために開拓者を必ずおさめてくれると信じている。もし我々が土地を失えば、白人は全ての森を破壊するだろう。しかし、そうなれば我々はアリクイを、バクを、豹を、どこに狩りに行けばいいのだろうか?どこにも狩りに行けなくなれば何を食べていけばいいのだろうか?」
 ラオーニの言葉は1854年にアメリカインディアンのシアトル族長がアメリカ大統領へ宛てた手紙を常に連想させる。「動物なくして人間の暮らしはどうなるのだ?もし動物がいなくなったら人々は大いなる魂の不在により死んでいく。動物に何かが起これば、それはすぐに人間にも起こる」
 RFJは多くの意見を形として支援してきた。医療支援、森林保全事業、近年では先住民の子どものための新しい学校を日本政府の援助とともに設立した。
 南は、今でも、我々の一人一人が価値観を再認識し、アマゾンを、地球を将来の子どもたちのために保護するには何かを変えることを悟り、受け入れていかなければならないと確信している。「この地球は一つの体です。もし私たちが一つの部分を切り取ったら残りの部分は苦しむでしょう。これは我々が考慮していかなければいけない意識なのです」と、南は強く主張する。
 150年以上前に、シアトル族長はこう書いた。「地球は人に属しているのではない。人が地球に属している。全てのものはつながっている。地球にふりかかることは全ての地球の子どもたちにふりかかる。人間は生きることを自分たちで作り上げているのではなく、ただそこに生かされているだけである。その生きる場所に何かをすれば、それは必ず人に返って来る」


                                                     <翻訳・構成 白石絢子/船原聖子>





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