Rainforest Foundation Japanホームへ特定非営利活動法人 熱帯森林保護団体(RFJ) Amazon Rainforest Foundation Japan

熱帯林の現状

森林破壊の歴史と乱開発

アマゾンにおける乱開発のはじまり

kaihatsu.jpgポルトガル人が始めて南米大陸、現在の「ブラジル」の大地を踏んだのが、およそ500年前。それ以来、先住民たちが暮らしていた森はその姿を変えていくこととなりました。

アマゾンの乱開発が加速度的に進み始めたのは、1970年代からといえます。国道の建設、ダム建設、鉱山開発などのプロジェクトが70年代に始まるや80年代にはアマゾンの破壊は急速に進行しました。
都市のスラム化を抑えることを目的として、ブラジル政府のポロノロエステ計画で「土地なき人に土地を」をスローガンに、ブラジル南西部の貧農民がアマゾンの広い土地を無償で手に入れました。世界銀行も政府を支援したこの計画も、 結局は焼畑による森林破壊の担い手が増加し、土地は痩せ、農民は満足な土地は手に入れらず、結局都市へと戻りスラム化は止まることはありませんでした。

ブラジルは貧富の差が大きく、約400人の大地主がイギリスの面積に近い土地を所有していると言われています。(ブラジル全人口のたった約4%の人がブラジル経済を握っているといわれています。)
ポロノロエステ計画で土地を得た貧しい人々も結局は大きな資本主義経済の中で利用されたといってもよいでしょう。

鉱物資源採掘による乱開発

1967年にカラジャス鉄鋼山が発見され、JICAの大カラジャス計画が開始されました。マンガン、金、ボーキサイト、アルミ等の開発について、日本は融資、そして大きな消費先として 重要な役割を担っていることはいうまでもありません。

 

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前述の大カラジャス計画による開発では、110トンの鉄を生産するために20万トンの採掘が必要とされます。そして、国外に輸出するために大西洋側の港までの鉱物運搬用道路、鉄道が引かれ、湾岸整備が行われました。

また、製鉄工場に使われる木炭は年間400万トンにものぼり、大きな環境破壊にさらに加速をつけています。(木炭を1トン生産するのに、木材が2トン?3トン消費されます。)森林保護という名のもとでユーカリの植林が計画されていますが、ユーカリ樹は繁殖が他の植物と比べて非常に速く、緑化の成果が得られやすいのですが、アマゾンのような土壌がやせた大地にとっては、土を酸性化し、他の植物生態系に強い影響を与えてしまいかねません。

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製鉄工場で働く人々の住宅のために切り開かれたジャングル

アルミ


枯葉剤により、枯れた木々

大きな輸出先である日本が資金提供を行った「トゥクルイダム」の総建設費は約9000億円と いわれ、ここで作られる電力の3分の2は最も電力を消費するアルミ精錬に使用されています。このトゥクルイダムは東京の23区がすっぽり入る大きさであり、完成を急ぐために環境アセスメントをせず「ここには動植物、居住者などは一切存在しない」として計画が無理やり進められました。枯葉剤を使い、木々を枯らし、ダム建設は進められましたが、もちろん、ここもジャングルであり、先住民も住んでいました。
ここで採掘されたボーキサイトは、アルミのインゴットとして日本へ輸出され、缶のジュース、食品などとして私たちの暮らしに利用されます。

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先進諸国に輸出されるアルミのインゴット


水銀中毒のヤノマミ族の女性

ブラジルでは、露天掘りによる金採掘を行います。大規模にジャングルを切り開き、採掘し、金がとれなくなればまた次の土地へと開発は動いていきます。
1グラムの金を採るには通常2グラムから3グラムの水銀が必要とされます。すでにアマゾン川流域に放置された水銀の量は2000トンにも及ぶという報告もあり、アマゾン川支流域にくらす人々の水銀汚染による中毒症状が急速に増加し、深刻化しています。

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金採掘場跡地

牧場造成、エタノール資源による乱開発

牧場造成

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2004年ころアメリカでBSE問題が発覚し、EU諸国がアメリカから輸入していた牛肉を全てブラジルから輸入することになり、牧場造成がさらに拡大しています。

 

エタノール資源

cornfield.jpg世界の大豆供給源としてアマゾンの熱帯林が大豆畑に急速なスピードで変化しています。2004年は、森林消失面積が過去2番目に広く、それは先進諸国での 大豆の需要の増加の影響であります。

また、この大豆の精製過程で出る殻を利用し、養鶏が盛んになりました。現在、日本のファミリーレストランなどの外食産 業、加工食品に使われる鶏肉の約80%はブラジルから輸入されています。(2009年)

大豆による乱開発のスピードが収まらないまま、新たな開発が進んでいます。

それは、エコ燃料といわれる「エタノール」です。原料となる サトウキビ畑を作るために、さらなる森林破壊が進んでいます。

エタノール生産のために、2007年からの30年間でおよそ2500万haのジャングルがさ らに破壊され、エタノール用サトウキビ畑、になる見通しといわれています。

これは日本の約2/3の面積です。また、同じくエタノールの原料となるトウモロコシ畑も、食用からエネルギー用へと拡大していくでしょう。

大豆、牧場造成による破壊が止まらないまま、エタノールによる破壊の面積も加えれば、恐ろしいほどのスピードでアマゾンの森は消えていくこととなります。ブラジルの年間二酸化炭素排出量のおよそ80%は森林を焼くことで出る煙によるものです。(2009年現在)このような状況をふまえて、「エコ燃料」「健康に良い大豆」と、いえるのでしょうか。

先進国や大企業がお金の力を借りて、そこに暮らす立場の弱い人間(先住民、貧農)の意見を取り入れず、利権にからんで、一方的に開発をおこなっています。

日本の消費者は結果的にアマゾンの自然を破壊し、生産したものを消費しているのですが、複雑な消費構造の中で、そのような情報はなかなか伝わりにくいのが 現状です。

今こそ、一人でも多くの人々が環境破壊の原因に自分たちがどうかかわっているのかを知り、行動を起こしていくべきではないでしょうか。全ての生態系は分断しておらず、関係性の上に自然の法則に従って成立しているので、地球の生態系が狂い始めると、それはドミノ倒しのように一気に進んでしまいます。

そして今ーベロ・モンチ水力発電ダム建設計画

2009年夏ころより、シングー・インディオ国立公園の北に位置するパラ州アルタミラ市付近に巨大ベロ・モンチ水力発電ダムを建設する計画が具体化し始めました。それを受けて2009年10月末に国立公園の境界線に位置するポスト・ピアラスにてインディオたちが集結し、ダム建設計画の撤回を求める抗議集会を行いました。

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(ピアラスでの抗議集会の様子)

 この計画の大きさから、州や町から建設計画を見直す提訴が何度も起きましたが、政府はことごとくそれらを押さえつけ、2011年1月、建設現場設営許可をIBAMA(環境資源局)が下し、4月には建設許可を得てダム建設の着工を実現しようとしています。


■ベロモンチ水力発電ダムの比較データ:

 ―ダム湖の面積(400平方km)
  ・八ツ場ダムの132個分
  ・山手線内側の6倍
  ・大阪市の1.8倍
  ・横浜市とほぼ同じ大きさ

 ―せき止めた水は、ダム湖取水口から100km以上下流に設置される
  発電施設まで、巨大水路を通して導水されることになる。
  それによって干上がってしまうおそれのある河の部分の長さは、
  ・淀川の1.5倍の長さ
  ・多摩川とほぼ同じ長さ

 ―最大出力(1万1233メガワット=1123万3000キロワット)
  日本の標準的な原子力発電所の約10基分

(参考データ)
 八ツ場ダム湖面積:3.04km2
 山手線内側面積:65km2
 横浜市面積:437.38km2
 大阪市面積:222.30km2
 淀川延長:75.1km
 多摩川延長:138 km
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 ―電力の用途について:
 発電した電力エネルギーの用途について、政府はまだ明言していません。政府は「パラ州内で利用する」とだけ言っています。送電線網の建設は特に計画されておらず、電力が慢性的に不足している大都市部への供給は予定していないようです。計画に反対するブラジルの研究者の中には、流域一帯の鉱山開発を政府は見すえているのではないか、と懸念する人もいるようです。
もしそうだとすると、輸出用となるわけですし、日本をはじめとする先進国にダイレクトにかかわってくる問題につながります。


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(抗議集会でのラオーニ:左とメガロン:右)

■代表、南研子より

 
 約500年前にポルトガル人がブラジルに侵入する前は、この大地には先住民(インディオ)しか存在しませんでした。当時はその数約1,000万人ともいわれていますが、現在は約38万人に減少してしまいました。ブラジルの繁栄はインディオの血と涙を礎に成り立っています。インディオの人たちは、自然に対し畏敬の念を抱き、森の恵みに感謝して生きていますが、今また彼らと森が危機的な状況にさらされています
 今回のべロモンチ・ダムがもし建設されたとしたら、人類が絶滅の一途を辿ることを暗示します。地球の酸素供給源であるアマゾンの森を、カーボンオフセット、開発可能な対象としか考えず、金換算で破壊することは間違っています。
 このダム建設は住民であるインディオの人に一切の説明、相談も無く既にブラジル議会で可決され、10月26日の環境省の見解と回答を待つだけになっています。どのような結果になっても、ダム建設現場周辺のカヤポ族は、“ダム建設反対”の抗議行動を起こす決断をし、カヤポ族の長老ラオーニが各部族に呼びかけ、ムーブメントが始まりました。
当団体は1989年、このダム建設撤回のメッセージを始まりに、ワールドキャンペーンツアーを行ったイギリスの歌手スティング来日を機に設立しましたが、20年後の現在、この計画が再浮上し、また同じ過ちを繰り返そうとしています。


■スタッフ白石絢子による2009年10月インディオ抗議集会視察のリポート

 10月末、シングー先住民保護区を横切る国道322号線(旧080号線)沿いにあるポスト・ピアラスに300人以上のインディオたちが集結し、ベロ・モンチ水力発電ダム計画への抗議集会を始めました。カヤポ族、ジュルーナ族、クイクル族、シャバンチ族、ワウラ族、カマユラ族、カヤビ族… 集まった10部族以上のインディオたちは怒りに満ち、前代未聞の環境破壊を起こすであろうダム建設を断固撤回することを求めます。この抗議集会では、今まで一度も誠意を持ってインディオと向かい合うことをせず計画を推し進めてきたブラジル政府関係者をこのポスト・ピアラスに呼び、正式な討議をするよう要請したにも関わらず、5日間に渡ったこの抗議集会に対して政府サイドは沈黙を貫き、コメントの一つも出しませんでした。
 当団体スタッフ白石が現地に足を運び、ムーヴメントの中心人物であるカヤポ族のメガロンに会うよう、現地スタッフとともに急遽旅程を組みました。皮肉にも、この集会に政府からの返答はなかったものの、インディオは部族を越えて、その結束を固めたようでした。2007年に来日した長老ラオーニは、誰よりもこの集会をとても喜んだと聞きました。彼はいつも先頭で一人、闘うことを止めません。今まで背後で彼を支えてきた先住民たちは今、全員が彼と同じ線上に立ったのです。
 メガロンと向かい合って話をすると、ポスト・ピアラスのムーヴメントは確かに有意義なものでしたが、ムーヴメントにかかる経費は貨幣経済のない彼らにとっては厳しいものでした。 “貨幣経済のないところを支援するには貨幣が必要である”といつも南がいう現実がどんと彼らの前に立ちはだかります。
 政府は莫大な資金と権力を武器に、一方的な価値観を押しつけ、インディオと対等に向かい合うことをしません。ベロモンチ水力発電ダムの建設に投じられる予算はどれほどになるのでしょうか。その資金があったら、どれだけの有意義なプロジェクトができるでしょうか。保護区の一歩外に出れば、そこは貨幣経済です。インディオにとっては価値観も文化も異なる、いわば外国です。インディオたちは、自分たちの住む森を、川を、自然を破壊され、この異文化の国となってしまったブラジルと言う地で今も、これからもずっと暮らしていかなければなりません。

“川が干上がれば、魚はいなくなる、森はなくなる。そして、我々は食べ物を失う。我々の子供たちの未来はなくなる。我々はあなたたち(ブラジル政府、ブラジル人)と同じ人間なのだ。あなたたちは我々に対し敬意が全くない。我々にとって、そして、この大地にとって、森は全てなのだ。”

 彼らインディオたちがいなければ、無言のままベロモンチ水力発電ダムは建設されていることでしょう。彼らはこの困難な状況下でも声をあげて私たちにたくさんのことを気づかせてくれています。生まれたその瞬間、全ての人は同じ輝きを持った命としてこの星に降ります。そして、彼らの森での生活には、その輝きを大人になっても一人一人が同じように持ち続けられる生き方があります。今後も当団体ではこの計画の情報を発信していきます。


■ベロ・モンチ水力発電ダム計画に関する情報

・RFJは2009年12月に、このダム計画の撤回を求める署名を集めました。詳しくはニュースをご覧ください。
・最新情報はジャーナリスト、下郷さとみさんのブログにも更新されています。