アマゾンの現状

アマゾンは、広大な水域に発展した世界最大の熱帯林です。その豊かな水域は、アマゾン川と、そこに流れ込む大小の無数の支流から形づくられています。そして豊かな森と川の恵みを受けて、アマゾンでは太古の昔から先住民族が生活を営んできました。
しかし彼らが守ってきた伝統的な暮らしは、森を破壊して推し進められる大規模開発や、外から流入する貨幣経済や現代文明の影響により、さまざまな面で変容が進みつつあります。

世界最大の森と淡水

面積が550万㎢にもおよぶ世界最大の熱帯林、アマゾン。地球上の熱帯林の総面積のおよそ半分を占める広大な森です。
全長7000㎞という世界有数の大河・アマゾン川と、そこに流れ込む1000本以上の大小の支流は、地球上の全淡水量の15%を有する700㎢もの巨大な水系を形づくっています。
豊かな水が森をはぐくみ、と同時に、豊かな森の存在が大地の潤いと川の流れを守ります。森と川は、たがいに支え合いながら、アマゾンの環境を作り上げています。

豊かな生物多様性

アマゾンの森は多種多様な生き物をはぐくむ生命のゆりかごです。アマゾンには昆虫がおよそ250万種、魚類がおよそ3000種、植物は少なくとも4万種が、またわかっているだけで、427種の哺乳類、1294種の鳥類、428種の両生類、378種の爬虫類が生息しています。アマゾンでしか見られない固有種も多く存在します。このように多様性に満ちたアマゾンの生態系は、反面、とても壊れやすいという側面があります。熱帯林の土壌はやせていて、緑を失えば大地は強い日差しの下で急速に荒廃が進むからです。アマゾンの環境に適応して進化した生き物たちは、森が破壊され環境が変われば生きてはいけません。

ブラジルとアマゾン

アマゾン熱帯林の広がりは南米大陸の9ヵ国におよび、そのうち最大国のブラジルがアマゾン全体の面積の63%を占めています。ブラジル政府はアマゾンと、その周辺のセラード(熱帯草原)からアマゾンへと移り変わる部分を含めた地域を「法定アマゾン」と定め、開発と保護の両面の政策を進めてきました。法定アマゾンの面積は522万㎢でブラジルの国土面積の61%にもおよびます。気候変動枠組条約に基づく二酸化炭素排出削減の国際的な枠組み(パリ協定)において二酸化炭素の吸収源となる広大なアマゾンを擁するブラジルは、国際的にも重要な位置に立ってきました。アマゾン熱帯林の保護は地球の種の多様性を守るだけでなく、地球規模の気候変動の抑止にもなります。また二酸化炭素排出権の国際取引市場では圧倒的に売り手の側に立つブラジルにとって、アマゾンの保護は経済的利益にも直接的につながっています。

いっぽう、2019年1月に発足した新政権はパリ協定からの離脱を示唆するとともに、アマゾン地域における大規模農業開発や鉱山開発のさらなる推進を表明しています。先住民族による土地の利用のみが憲法で認められている先住民族保護区内でも、それらの開発を認めていこうとする政府の動きもあり、今後の動向が注視されています。

アマゾンの破壊の現状
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